このころすでに夏が終わり9月に入ったばかり、なかなか目線の定まらない我が子を見つめる妻、時々春菜のひとみがおかしな光り方をするのに気が付きました。黒いはずのひとみがうっすらと白く光っています。検査入院中にはいろんな可能性を探るため歯科口腔外科、眼科などあらゆる方面の先生に診ていただきましたがその時には全く異常がなかったので約1ヶ月の間に急激に白内障が進んだことになります。
あわてて病院へ駆けつけました。主治医の先生に訴えるとまず代謝異常の診断のため血液検査を受けてその後すぐに眼科で見てもらうことに。瞳孔を広げる目薬をしながら診察を待ちました。瞳孔が開くにつれ瞳の白さが際だってきます瞳孔がいっぱい開いたときには言葉にならないほどびっくりしました。全く真っ白でこれでは何も見えていないとはっきり分かるほどでした。呼ばれて診察室にはいるとき他人の目が気になりました「かわいそうに白内障か、真っ白やんか」などと声が聞こえてきます。身体にハンディを持ったうえ目が見えないとなるとうちの子はいったいどうなるのだろうとこの時ばかりは悲壮な思いでした。
さすがにこの時は気が滅入ってしまって今までこらえていたものがあふれ出し、母の前で声を出して泣いてしまいました。「何で俺だけこんな目に会わなあかんのや」と訴える息子を見て母も一緒に泣いていました。
その当時この病院(大阪医科大学付属病院)では子供の白内障の手術が出来る施設が整っていませんでしたので天理のよろず相談所病院を紹介していただきました。このころから春菜は目をこする動作をよくしました、今まで見えていたのが見えなくなったのでどうなったのかと思っていたことでしょう、あどけない表情で目をこすっています。その病院には未熟児網膜症では有名な先生が居られ眼科は超一流とのことでした。天理というとかなりの距離しかも初診の受付は午前8時半まで。間に合いそうにないので前の日からビジネスホテルに泊まって診察に向かいました。
診断は先天性白内障。出来るだけ早い手術が必要です、発達段階にある子供にとって光りが入ってないのは致命的で、視力が確保できないかもしれないとのことでした。幸い6ヶ月頃までは白内障はなかったようなのでそれまでは見えていただろうから早くもとに戻してることが視力の確保と言う観点から最善の方法なのだと言われました。小児科の診察も必要と言うことであらためて来院、手術okの診断をしてもらっていよいよ入院の日取りを決めることに、それにしてもかなり距離があるところなので見舞いや付き添いの交代などそうそう出来るものではありません。途方に暮れる感じ。
あれやこれやバタバタしているうちにすでに10月、いよいよ入院です。白内障が分かってからすでに1ヶ月少しでも早く光を入れてやらないと視力の発達が心配なのに時間ばかりが過ぎて行く感じ。
入院後は手術適応の検査をして手術の日を予約していただきました。手術の内容を説明していただきました。水晶体が何らかの理由で白濁しているのですがその原因は分かりません。ガラクトース血症と言う代謝異常がある場合は白内障を併発する事が多いようでその方面の検査をしていただくため、大阪医大の先生が取り出した水晶体を取りに来てくださるとのこと、色々お医者さんどうしの打ち合わせもあったのでしょう。
10月15日に手術がありました。まだ8ヶ月の子供が手術室に入っていくのを見送るのは何ともいたたまれませんでした。執刀医にしてみれば慣れたもので簡単な手術でしょうが。