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春ちゃん成ちゃんへの手紙
~ママの日々~


1998年12月15日(火) [長年日記]

_ 朝・・・

夕べ家に帰ったのが1時頃だっただろうか。 春ちゃんは静かに寝ていてくれて助かった。 成ちゃんはとりあえずは寝たがやはり時々夜中に泣いた。お腹の張りも 一晩中変わらなかった。私もほとんど寝られなかった。 「病院へ行こう」成美を起こそうとすると 嘔吐。昨日のお昼ご飯から何も食べていないのに・・・たぶん腸が膨らんで胃が押し上げられているのだろう。それにしても嘔吐物が小豆色だ。出血しているらしい。 一刻も早く病院へ行って診察を受けたい!

春ちゃんはお父さんに任せて私はお兄さんに送ってもらって午前8時30分頃に病院に着いた。 お兄さんに「帰りはどうする?」と聞かれたが「また連絡します。」と答えながらも 今日は帰れないかもなぁ・・・ と考えていた。 9時過ぎから診察が始まった。 今日はさほど患者は多くなく 3番目くらいだったろうか。 運良く、消化器専門の先生に見ていただけた。 ざっと診察を受け レントゲンを撮った。寝た状態、座らせた状態で正面からと右側面からの計3枚。 レントゲンを見ながら先生は 「腸がガスで2倍くらいに膨らんでいる。腸が動いていないのだろう。このままだと 食事が摂れず脱水になるから入院した方がよいが出来るか?」と聞かれた。明日、主人は胆石手術のため入院なのに・・・ そう伝えると、とりあえず、通常の倍ほどの量の浣腸をそれも奥の方まで入れてみて その結果で考えることにしよう、と言うことになった。

診察の間 成ちゃんはとにかく寝てばかり・・ 時々苦しそうに泣く。

処置を受けている間に主人に経過報告の電話を入れた。「入院になるかも知れない。」と。

処置室に戻り成ちゃんの寝ている傍らに座りひたすら 浣腸の効果を期待した。 「どうかこれで楽になりますように、おならがいっぱい出ますように・・お願い!」 どれくらい待っただろうか、30分くらい待ったかな・・・ いっこうに その気配はない。腹圧がかかるように寝ている成ちゃんを無理矢理起こして泣かしてもダメ。 そんなぁ〜、うそでしょ〜? そのうち先生が来られて「出んか?・・入院しよか?良いですか?」 これはもう仕方ない、どうしようもないもん・・・今は一刻も早く成ちゃんの状態をよくすることが一番だ。 主人には申し訳ないが・・・

入院と決まり病棟の準備が出来るのを処置室で待った。脱水予防の点滴後 看護婦さんが「排ガスをしてあげよう」と 腸にチューブを入れてガスを出すことを試みて下さったがダメだった。

病棟の準備ができ 看護婦さんと部屋に行った。小児病棟はいっぱいで外科病棟と言うことだった。 入院に際して看護婦さんとお話をしていると小児科の先生が来られた。 成ちゃんは風邪もひいているのでそのせいで腸の働きが弱くなっている事もあるので点滴や抗生剤によって風邪の改善によって腸の動きが出ることをまず期待したい、と言われた。 「今、少しでも楽にしてやれないものか?」と尋ねると 「腸を動かす薬もあるが 腸に詰まりがある場合には使うと危険なので その辺はどうするか考えたい。口からは何も入れなければ大丈夫だから。」と言われた。しばらく経過を見ないと仕方なさそう・・・なんとか楽にして欲しいとそればかり思った。 嘔吐の血液もますます増えているのか小豆色の嘔吐物は鉄臭い、血液独特のにおいがしていた。 不安になって尋ねると「 この程度の出血ならたぶん 腹圧によって食道が切れたとか言うものだと思う、心配な場合はもっと真っ赤な出血が見られる。」と言われた。 しかしながら 出血の様子を見るのと 胃の減圧のためにマーゲンチューブを鼻から入れて先を解放して胃の内容物が外に出るようにすると言われた。

病室に落ち着いたので主人と付き添いを一時交代してもらって荷物を取りに帰った。 家では学校の先生二人が春ちゃんのことを見ていて下さった。 先生方も夕方で家に帰れば主婦としてお忙しい時間なのに申し訳ない、本当にありがたく思った。 急いで成ちゃんの物と私の物を鞄に詰めた。 それだけではない、明日から春ちゃんは寄宿舎入舎なのでその荷物も先生に手伝ってもらいながら詰めた。 明日からの入舎は本当は 主人の入院の為だったのに・・・主人の入院はキャンセルだ。

急いで病院に戻ると 成ちゃんの鼻にはえーらい、太い、マーゲンチューブが・・・ 「ちょっとー、太すぎるやん、可愛そうにー・・・」 気持ち悪いらしくますますぐずっているし チューブの刺激で空気を飲み、痰もますます絡む。 大人用のチューブらしい。減圧するにはこれくらいの方がよいのか、あとで細いのに変えてもらおうと思った。 主人には帰ってもらった。

もう夕方6時頃だったろうか、お昼ご飯を食べていなかった。 買ってきた細巻きを食べたが味がわからないくらい気分が高揚していた。

成ちゃんのお腹は相変わらず・・・何度おむつの中を覗いても何も出ていない。 少しでもましになるかと思い 足の三里や合谷のツボを刺激した。結構このツボはお腹を動かしたり便秘に効くのだ。 時折、膨れ上がった腸管の中を カンカンと何かが転がってでもいるような音がかすかに聞こえる。 おへその周りのツボもいやがらない程度にそっと押してみたり・・・ こんな事くらいしか私に出来ることはない。 ひたすらツボ刺激や 軽くお腹のマッサージを続けた。 時々 コロコロとお腹の音がしていたが、おへそのすぐ下を押していると ギュルギュルと音がし、腸の中を内容物が駆けめぐるような気配がした。 「少し動いた!」 ひたすら 祈りながら 優しくツボ刺激をした。

しばらくしておむつを覗くと少し便が出ていた。夜8時頃だったと思う。 「あー、少しだけど出た!」 期待を持たせるような量はなかったがそれでも今までのことを思うと一縷の光が見えた。 看護婦さんに報告した。「ちょっと動いてきたかな、全然音がしてないわけでもないのよ。」と 成ちゃんのお腹に聴診器を当てながらそう言われた。