2002年02月02日(土) [長年日記]
_ [ブック] 『少年A』この子を生んで/文春文庫
看護婦さんとの会話の中で「子育てって難しいですね。」と言われました。神戸連続児童殺傷事件の犯人の両親が綴った「『少年A』この子を生んで」..父と母の悔恨の手記(文春文庫)を読んでしみじみそう思った..と言われるのです。この看護婦さんは未婚なので子育ての実感は分からないけれど 子育ては難しい、恐い、と感じられたようでした。「よかったら読まれますか?」と言われ、今まで特に読みたいと思った本では有りませんでしたが 話しているうちに興味が湧いてきて読ませて頂きました。
一言で感想を言うと 14才の犯人の両親はどこにでもいる普通の親..。そう思いました。読む前は偏った考えや子育てをされてきたのではないかと勝手に思いこんでいましたがこの手記を読む限りではそうではなさそうです。確かにちょっと物わかりが良すぎるのではないか?とか、その反面細かい小言が多いのではないか?、とかもっとワイルドな子育てでも良いのではないか?、とか感じる部分は有りましたが それが間違った教育という範疇のものではないようです。ごく普通のどこにでもいるような親です。でも「少年A」は親に対して自分は虐待を受けていたとか、嫌悪感を抱いているとか言う部分があるようなので どこかしら親に対して不満を抱いていたようでした。
事件後に行われた精神鑑定では「少年は虐待者でありながら 被虐待者であった。」とありましたが 手記中には親の虐待を感じさせるような記述は何らなかったように思います。と言うことはひょっとすれば あくまでこれは親の手記であるので 第3者から見た場合には偏った考えや教育があったのかもしれません。この本を読んだだけでは何も分からなくて 誰もが犯人の親になりかねないと、不安ばかりが大きくなるような気がします。なにかモヤモヤが残ってしまって..。
できることなら周りから見たこの家族について知りたいと感じました。ただ 少年の異常行動を見ると単なる教育の間違いという受け止め方だけではなく 何かまだ未解明の病的な因子が関わっているのかもしれないと思うと同時に 猫や弱者を虐待することで性的な興奮を憶えていたという事実にも、もっと焦点を当てれば今の社会の問題点を浮き彫りにすることができるのかもしれません。